顎関節症と難聴:かみ合わせが悪いと出る症状
- 2024年11月15日
- かみ合わせ,かみ合わせが悪いと出る症状,耳症状,顎関節症,歯ぎしり・食いしばり
かみ合わせが悪くなると、様々な症状が出てきます。口腔内にいろんな症状が出るのはもちろん、全身にも症状が出てしまう事もあります。かみ合わせが悪いと様々な症状が出ることは、一般的にも広く浸透し、全身症状を主訴に長坂歯科を受診なさる患者さんも非常に多いです。また、耳鼻科や整形外科、内科など、歯科以外の専門の科からご紹介・相談をいただくケースも年々増加傾向にあります。
とくに耳鼻科からのご紹介は非常に多いです。患者さんが耳症状を発症し耳鼻科を受診したところ、耳には問題がなく、耳鼻科の先生が「かみ合わせに問題があるのでは?」と疑ってくださるケースが多いように感じます。また、耳鼻科では耳に問題がないので原因不明のメニエール病と診断されたが、どうもかみ合わせが原因なのではと疑問を持ち、受診なさる患者さんもいらっしゃいます。
耳症状とかみ合わせには深い関係がありますので、しっかりと検査診断することが大切です。
顎と連動して耳症状がある
●耳鳴り ●耳詰まり ●難聴 ●めまい、たちくらみ
・食事中や食後に、耳の症状が悪化する
・朝起きると耳の症状が悪化している
・顎を動かすと、耳鳴りに変化がある
・あくびをしたりつばを飲み込むと耳の症状が変化する
かみ合わせ由来の耳症状をおっしゃる方は、同時に顎関節症を併発しているケースが非常に多いです。
問診を取ると、顎関節症の既往があったり、ご自覚していなくても検査をすると症状が見つかることもあります。
顎関節症の症状
・口を開くと顎から音が鳴る(カクカク・じゃりじゃり・ピキピキ・バキッ)
・口を開くとひっかかる
・口が開きにくい
・口を開くと顎に痛みがある
・口が開かなくなった
顎関節症のメカニズム
顎関節症はかみ合わせが悪いと出る症状の一つです。かみ合わせが悪くなると、顎の位置(顎位)が歪んでいきます。顎位がゆがむと、下顎の付け根が、顎関節にめり込んでいきます。顎関節部には関節円板と呼ばれるクッションがあるのですが、下顎の付け根がめり込んでくると、関節円板を押しつぶしてしまったり、ずらしてしまい、痛みが生じてしまいます。
体にはいたるところに関節があります。膝や肘などであれば、悪くなった際、一時的にでも関節に負担がかからないように生活することはできますが、顎の関節は安静にする事が出来ません。生きていくうえで、食事や会話をやめることはできませんし、無意識下での歯ぎしり食いしばり等はご自身ではどうすることもできません。かみ合わせを根本から解決する必要があります。
顎関節症と耳症状
下顎の付け根が顎関節にめり込んでくると、顎関節症を発症します。顎関節症と併発して起こりやすい症状が耳症状です。特に、難聴・耳鳴り・耳詰まり・めまいと立ちくらみが起こりやすいです。顎関節症と耳症状の関連の理由が、顎関節と耳の物理的な位置関係にあります。上記の図にもあるように、顎関節と耳の穴はすぐ隣にあり、耳の穴を構成している壁の一つが顎関節でできています。顎関節のレントゲンを撮る際は必ず耳が映りこんでくるくらい、近くに存在しています。
下顎の付け根が顎関節にめり込んでくると、当然耳にも圧迫が加わります。耳が圧迫されることにより、難聴・耳鳴り・耳詰まり・めまい立ちくらみといった耳症状が発症してしまいます。
かみ合わせを治したことで聴力の改善
顎関節に過度な負担をかけないことが、とても大切です。その為に、かみ合わせを良くしていき、バランスよく噛めるようにしていく必要があります。突発性難聴が歯の治療により改善するという症例も聞いたことがあるかと思いますが、これは単に歯科治療をすればよくなるというものではなく、歯科治療をして、かみ合わせを改善し、正しい顎の位置にすることで、耳症状の改善も考えられるということです。
かみ合わせ治療を行うことで、聴力に改善がみられることがあります。耳鼻科で検査をしていただき、耳に問題がないといわれた際は是非一度かみ合わせの問題も疑ってみてください。
かみ合わせと難聴に関する論文
長坂 斉、佐藤 亨、高江洲義矩、石川達也:咀嚼習癖に関連する聴力の動態、全身咬合学会誌、6(2)、147-152、2000
長坂 斉、松久保隆、佐藤 亨、高江洲義矩、石川達也:歯科処置および左右均等噛み指導による聴力の変化と均等化、全身咬合学会誌、8(1)、2002、90~97
長坂 斉、中村昭二,青木聡、星 詳子、松久保隆、石川達也:咬合と聴力に関する臨床的研究(1)噛み癖が及ぼす聴力低下とその客観的診断法(オージオメータ);日本顎咬合学会東京、2003-6-29.