噛み合わせを検査するとき、耳症状も調べる理由
- 2025年4月7日
- 噛み合わせ,噛み合わせが悪いと出る症状,耳症状
長坂歯科は、日本全身咬合学会に認定された、噛み合わせの専門医・指導医がが検査・診断・治療を行っています。全国から多くの「噛み合わせ」に関する症状を抱えた患者さんがご来院なさっています。噛み合わせ由来の症状は患者さんごとに様々です。歯周病や、歯の痛みで悩まれている方もいれば、耳症状や顎関節症状、頭痛などの全身症状でお悩みの方もいらっしゃいます。長坂歯科では、様々な検査をし、細かい噛み合わせの状況を診断していきますが、その検査の一つに「聴力検査」があります。耳の症状を調べる検査です。噛み合わせに問題があるかを調べる検査ですので、実際にご自覚している耳の症状はない方にも検査を行うことがあります。今回は、噛み合わせの診断において、聴力検査がいかに重要であるかのおはなしです。
非常に難しい、噛み合わせの検査・診断
噛み合わせ治療において一番重要なことは、スタート地点です。まずは噛み合わせが良いか、悪いかを診断しなくてはいけません。噛み合わせが悪いことを調べずに、他の治療をしてしまうと後々影響が出てきますし、逆に噛み合わせに問題がないのに、いつまでも噛み合わせ治療を続けることも良くありません。そのためには、まず一番初めに、噛み合わせが良いのか、悪いのかを診断する必要があります。さらに、ここで噛み合わせの良し悪しを、適当に決めてはいけません。きちんと「診断」しなくてはいけません。とても多いのが主観に頼って決められてしまう事です。よく、他院の先生から噛み合わせに関する症例のご相談をいただくことが多いのですが、なぜその症例の患者さんが噛み合わせが悪いと思ったのかの近経を聞くとたいていが「患者さんがそういているから」「噛み合わせが悪そうに感じるから」という主観でしかありません。本来、治療を行う上では明確なデータを示し、このデータがこういう値を示しているから、この病気ですと診断しなくてはいけません。ですが、噛み合わせに関してはいつまでたっても主観で決められてしまう事が多いです。その理由の一つが「噛み合わせ」という言葉の曖昧さにあります。
せて、みなさんは「噛み合わせ」と聞くと何をイメージするでしょうか。たいていの方は、食べる時やしゃべる時に上と下の歯がぶつかる関係だと考えるかと思います。ですがここがまず間違いです。日常で食事中や会話中をイメージしてください。皆さんは歯を動かしていますか?歯は動かしていませんよね。人間は「顎」を動かして、食べたり・しゃべったり・くいしばったりしています。それを踏まえると、「噛みあわせ」とは上と下の歯と歯が動いてぶつかっている関係ではなく、顎が動いてぶつかっている関係を示しています。
あくまでも注目している点は顎の動きです。ここでよくある間違いがもう一つ「噛み合わせ」と「歯並び」についてです。この二つが非常に似ているため、ごちゃごちゃにイメージされてしまい、混同されてしまいます。ですが「噛み合わせ」と「歯並び」には明確な違いがあります。その違いが動いているか、止まっているかです。歯並びを診断する際は、模型を診ながら診断します。ようは動いていない状態なんですね。模型上で綺麗に歯が整列しているかどうか。はみ出している歯がいたら並べる、これが矯正治療です。歯並びの診断は「静的」な状態で診断が必要になります。
一方で先ほどお話ししたように「噛み合わせ」は顎の動き、つまり「動的」な分野です。ということは、動いていない模型を診ても診断をすることはできません。動いた状況を見てはじめて診断がつきます。動的な要素を診断するのは非常に困難です。歯科医師は患者さんと常に日常生活を共にすることはできませんし、あくまでも病院の診療室での動きしか確認できません。ですので、日常での「噛み癖」を見つけ出し診断をすることが必要になります。その為に、様々な検査をして、様々なデータを集め、それらを照らし合わせたうえで初めて診断がつきます。すべての病気と同じようにきちんと、科学的な根拠に基づいて「診断」をすることが大切です。その際に必要なデータの一つが「聴力値」です。
ですので、耳に症状がない患者さんでも、噛み合わせを調べるうえでは聴力検査を行うことが重要です。
噛み合わせと耳症状に関する論文
長坂 斉、佐藤 亨、高江洲義矩、石川達也:聴力は咬合のセンサーか、日本歯科評論,Vol-61No1(2001-1)1~9
長坂 斉、佐藤 亨、高江洲義矩、石川達也:聴力は咬合のセンサーか(2)、日本歯科評論,Vol-61No1(2001-6)
長坂 斉:歯科処置によって変動する聴力値とオージオグラムの変化パターン、全身咬合学会誌、8(1)、2002、82~90、