噛み合わせが悪いと出る症状「突発性難聴」
- 2025年1月9日
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噛み合わせが悪いと様々な症状を引き起こしてしまいます。口腔内にはもちろんですが、全身にも様々な症状が出ます。特に耳症状が発症してしまう患者さんは多く、耳鳴り・難聴・耳詰まり・めまいなどのご相談があります。噛み合わせが悪いことで耳症状が発症するということは、最近広く知られるようになり、耳症状を主訴にご来院なさる患者さんは年々増加傾向です。また、耳鼻科の先生から、噛み合わせの問題では、とご紹介を受ける症例も増えています。
噛み合わせ由来と気づかれにくい耳の症状
噛み合わせが悪いと出る症状はおおきく二つに分類されます。口腔内症状と全身症状です。噛み合わせによって発症する症状の総称を咬合関連症といいます。咬合関連症の中に「耳症状」が含まれます。
口腔内に症状が出れば患者さんは歯科医院を受診なさいますので、そこで検査をすることで噛み合わせの問題が指摘されます。一方、全身症状が発症した際は、歯科医院を受診するのではなく、それぞれの専門の科を受診します。そこで検査をし、噛み合わせにご理解のある先生であれば、歯科医院の受診を進められますが、なかなかそうもいきません。その状態で、原因不明と判断されると、患者さんもどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。噛み合わせが悪いと出る症状の大きな問題の一つが、原因が噛み合わせだと気付かれにくいということにあります。
噛み合わせと耳症状の関係
噛み合わせが悪くなり、耳に症状が出てしまう理由は耳と顎関節の物理的な位置関係です。噛み合わせが悪いと、顎の位置(顎位)が少しずつずれていきます。顎位が変化すると、顎の付け根の位置も連動してずれていきます。
大臼歯(奥歯)で噛む偏った噛み癖がある方は、下顎の付け根がどんどん奥にめり込んでいってしまい、顎関節を圧迫していきます。顎関節と耳の穴は物理的に真横にありますので、顎関節が圧迫されると、その衝撃は耳にも連動して加わります。
この負担が慢性的に加わることで、耳症状が発症してしまいます。
注意が必要なのが、必ず専門の科ははじめに受診してください。耳症状が出た際は必ず速やかに耳鼻科を受診することが大切です。たとえそれが噛み合わせの原因であったとしても、耳鼻科の先生に精査をしていただき、耳に異常があるかどうかをきちんと診断しましょう。症状というものは一つの原因だけで起きるわけではなく、様々な原因が複雑に絡むことで発症します。その原因の一つとして噛み合わせを疑ってみてください。
症例.矯正治療後に発症した突発性難聴が噛み合わせ治療により改善した症例
20代女性。初診時の主訴は「矯正治療後に突発性難聴が発症してしまった」とのことでした。2020年から歯列矯正を行っていたそうですが、治療の途中で顎関節症が発症してしまい、矯正治療後に左耳の低音性突発性難聴が発症したそうです。別の病院でマウスピース治療を行ったところ顎関節症状が悪化し、めまい症状も発症してしまったとのことです。
初診時の聴力
初診時、当院で聴力測定を行ったところ、左の聴力が全体的に低下している状況でした。口腔内を拝見したところ、矯正治療は終了しているそうですが大臼歯でしかかみ合っていない状況で、前歯は開咬していました。また小臼歯をはじめ多数歯は仮歯の状況でした。全顎的に歯周病が進行し、特に大臼歯部では垂直的に歯槽骨が吸収していました。
噛み方の改善から
矯正治療後から、奥歯でしか噛む事が出来なくなってしまったそうで、まずは前歯も含め全体的に噛むように噛み方の指導を行っていきました。前歯で噛む練習を行ったところ、その日のうちに顎関節症状(顎の痛み・顎の音)が改善しました
噛み合わせを考慮しながらの補綴治療
仮歯の状態をそのままにしておくと、噛み合わせのバランスが悪化してしまうため補綴治療を順次行っていきました。単に仮歯を最終補綴物に変えるというわけではなく、噛み合わせのバランスと順番を考慮しながら補綴治療を行っていきます。
補綴療後、難聴の症状が改善
補綴物を治療し、さらに全体でバランスよく噛むよう「噛み方」の意識を変えていったところ、難聴の症状が改善しました。顎の痛み、口の開け辛さなどの顎関節症状もすべて改善しました。
噛み合わせと耳の症状に関わる論文
長坂 斉、佐藤 亨、高江洲義矩、石川達也:咀嚼習癖に関連する聴力の動態、全身咬合学会誌、6(2)、147-152、2000、
長坂 斉、中村昭二,青木聡、星 詳子、松久保隆、石川達也:咬合と聴力に関する臨床的研究(1)噛み癖が及ぼす聴力低下とその客観的診断法(オージオメータ);日本顎咬合学会東京、2003-6-29.
今回のキーワード
・噛み合わせ
・噛み合わせが悪いと出る症状
・噛み合わせ由来の耳症状
・咬合関連症