メニエール病と噛み合わせ
- 2024年12月2日
- 噛み合わせ,噛み合わせが悪いと出る症状,耳症状
噛み合わせが全身に様々な影響を及ぼすということは、ここ数年広く浸透してきました。噛み合わせが悪いと出る症状の一つに耳の症状があり、耳症状に関するご相談でご来院なさる患者さんは年々増加傾向にあります。また、耳鼻科の先生からも、噛み合わせを調べてほしいとご依頼されるケースがとても増えています。歯科だけでなく、医科の先生・患者さんにまで噛み合わせの重要性が広まっていると実感します。
耳の症状の中でも特に相談として多いのが「メニエール病」です。耳鼻科でメニエール病と診断をされたもののどう治療していいか、何が悪いのかわからずに、噛み合わせの検査にいらっしゃる方はとても多いです。
メニエール病の症状
メニエール病とは、耳の中にリンパ液が溜まりむくんでしまい発症する病気のようです。耳鼻科の先生も、原因はよくわからないとおっしゃっていました。耳の中でリンパがたまりむくむことで、耳鳴りや耳詰まり、めまいが起きてしまうそうです。
耳の症状と噛み合わせの関係が分かったきっかけ
長坂歯科で噛み合わせと耳症状の関連を調べるようになったきっかけがあります。長坂歯科は開業から111年経つ歯科医院です。以前、隣が耳鼻咽喉科だったことがあります。同じ医療フロアですので、当院を受診なさる多くの患者さんが、お隣の耳鼻科も受診なさっていました。ある時、耳鼻科の先生から、「長坂歯科で治療した後、患者さんの聴力が著しく改善している」と報告を受けました。そこから耳症状と噛み合わせに関係があるのではと考え、東京歯科大学や東北大学と連携し、噛み合わせと耳症状の研究を続けてきました。
噛み合わせが悪いとどうして耳症状が出るのか?
噛み合わせと耳症状が起きてしまう大きな原因の一つが、顎関節と耳の穴の物理的な近さです。顎関節と耳の穴は物理的に近接し、隣同士にいます。耳の穴に指を入れて口を開けたり閉じたりしてみてください。顎の動きが指先で感じ取れるはずです。
エレベーターや飛行機などで耳が詰まった際、あくびをしたり口を動かすと、変化する経験があると思います。このように顎の動かし方が耳に様々な影響を及ぼしています。
人間は食事中や会話中、寝ている時ですら、無意識に顎を動かしています。噛むときに発揮される力(咬合力)は最大で体重の1.5倍の力が出ます。その力は顎関節にも直に加わってきます。顎関節が正しい位置で正しく動いていても、その負担は耳にも影響を及ぼします。噛み合わせ悪くなると、顎関節に異常な圧がかかり耳の症状が生じます。
耳の症状ですから、患者さんは耳鼻科を受診します。この状況で耳を診察していただくと、耳の器官には問題が無く、原因不明と診断されてしまいます。
偏った噛み方には要注意
左右どちらかで噛んだり、奥歯でばっかり噛んだりと、長年の偏った噛み方を続けていくと、歯にも偏ったすり減りが生じ、顎の位置が次第にずれていってしまいます。顎の位置がずれると顎関節に異常をきたし、噛み合わせ由来の耳の症状が生じてしまいます。
噛み合わせ由来の耳症状がある患者さんは以下のような症状の変化をおっしゃるケースが多いです。
・大きく口を開けると耳鳴りの音が変わる
・朝起きた時、耳鳴りや頭痛がひどい
・夕方になるにつれ耳の調子が悪い
・つばを飲み込んだり、食事をしていると耳の調子が変わる
・食後に耳鳴りが変化する
など
またメニエール病と顎関節症を同時に併発しているとおっしゃる患者さんも非常に多く、噛み合わせと耳の症状の関連は注意深く診察していく必要があります。
噛み合わせと耳症状はおおきく関係してきていますが、耳の症状が出た際は必ず初めに耳鼻科を受診してください。耳鼻科の先生に耳を精査していただいたうえで、原因がわからない場合は噛み合わせにも問題があるのではと疑ってみてください。
噛み合わせと耳症状の文献
長坂 斉、松久保隆、佐藤 亨、高江洲義矩、石川達也:歯科処置および左右均等噛み指導による聴力の変化と均等化、全身咬合学会誌、8(1)、2002、90~97、
長坂斉、中村昭二、青木聡、永原邦茂、渡邊誠、星詳子、松久保隆、石川達也:咬合と聴力に関する臨床的研究 その4.咬合関連聴力低下の偏位咀嚼分類(私案)からみた臨床調査、全身咬合、9(1)22~30、2003.
松久保隆,長坂 斉、中村昭二、小林義昌、高江洲義矩、佐藤亨,、星詳子、渡辺誠、中島雇也、山根源之、石川達也:周波数域聴力レベルと咬合咀嚼機能、第20回日本歯科医学会総会、2004、11,29~31、横浜