咬合関連症

　皆様は『咬合関連症』という言葉をご存じですか？その名の通り咬合（噛み合わせ）に関連する症状のことです。噛み合わせに問題があると、口の中だけでなく、全身にまで様々な症状をもたらしていきます。このように噛み合わせ由来の全身症状のことを専門用語で「咬合関連症」と呼びます。

 

噛み合わせの異常が全身に影響を及ぼす

　　以前は、噛み合わせの問題といわれてもあまり注目されることはなく「どうせ歯だけの問題でしょ」と思われ軽視されがちでした。しかし、噛み合わせ異常を放置しておくと様々な症状が出ることは以前より歯科の臨床の間では注目されていました。歯科医療の発展に伴い、噛み合わせの研究も進歩し、いまでは「噛み合わせ」が口腔内だけでなく全身にも影響をもたらすことは広く知られるようになりました。

　初診でいらっしゃる患者さんでも、「噛み合わせが悪くて全身症状があります」とおっしゃる方が年々増えています。歯医者んさんの先生からも「治療後に全身症状が出てしまったので診てください」とご依頼されるケースはとても増えています。また、整形外科、整体、マッサージの先生など幅広い医療の先生からも「体のゆがみの原因が噛み合わせにある可能性があるので診てください」とご依頼されるケースが増えてきました。

 

噛み合わせが悪いと出てくる症状

口腔内症状

　歯がしみる、歯が痛い、歯がぐらぐらする、歯ぐきがやせて下がってくる、歯ぐきが腫れる、歯ぐきから血が出る、歯ぐきから膿が出る、口臭がする、噛むと痛い、噛めない、歯が抜ける　など

 

全身症状

　耳の症状：難聴、耳鳴り、耳詰まり、めまい、たちくらみ、メニエール様症状

　顎関節の症状：口を開けられない、口を開けると顎から音が鳴る、顎が痛い、顎がずれる、顎が外れる

　頭頚部の症状：頭痛、首こり、肩こり、こめかみの痛み、首が動かせない

　腕の症状：腕のしびれ、ひじの痛み、手先の指のしびれ、四十肩・五十肩で腕が上がらない

　腰の症状：腰痛、股関節痛

　足の症状：膝の痛み、しゃがめない、足の甲の痛み、くるぶしの痛み、歩きにくい、足の指先の痛み

　　など

 

 

放置すると怖い、噛み合わせの異常

　抜けたままの歯があったり、痛くて噛めない歯があったり、治療途中の歯があったり・・・

悪いとはわかっていてもついつい放置している歯はありませんか？歯は２８本そろうことで、バランスを取っています。一か所でも悪い所があれば噛み合わせのバランスが崩れてしまい、異常をきたしてしまいます。

　噛み合わせの異常がそのままになっていると、上記したような症状が出てしまいます。

噛み合わせ専門医の重要性

　「噛み合わせ」の重要性はだいぶ広まってきましたが、それでもまだ「噛み合わせ」の治療は放置されがちです。患者さんから「前医での歯科治療の後に全身症状がひどくなったのに、関係ないといわれてしまった」や「耳鼻科や整形外科の先生から関係ないといわれてしまった」などとご相談を受けることがあります。　　　

　多少の医学知識があれば、顎が全身のバランスを取るうえでいかに重要であるかはわかるはずです。そこから噛み合わせの異常が全身へ影響を及ぼうということは当然であることはすぐにわかります。ですが、顎について専門的にみる医科がない為、「噛み合わせ」の異常が放置されたままになってしまうことがあります。

　また、「噛み合わせ」を専門的にみることのできる歯科医院は全国で見ても少ないです。当院の「噛み合わせ外来」も飛行機や新幹線で遠方からご通院なさる患者さんも多いですし、時には海外からいらっしゃることもあります。噛み合わせと全身の症状が一般に浸透する中、それに対応できる歯科医院が少ないことは問題です。噛み合わせ治療は歯や口腔内の知識だけでなく、顎を動かす筋肉や、顎関節の解剖、さらには全身まで熟知する必要があるので、高度な歯科医学知識が必要になります。

 

噛み合わせと全身症状の論文

長坂俊幸,矢野秀佳,長坂斉:咬合バランスの改善により突発性難聴をはじめとする全身症状に改善がみられた症例,日本全身咬合学会雑誌24(2),56-61,2018