かみ合わせと耳症状「歯と耳の関係」
- 2023年6月20日
- かみ合わせ,かみ合わせが悪いと出る症状,耳症状
かみ合わせ由来の耳症状
歯と耳の関係
噛み合わせが悪いと出る症状の中に、耳症状があります。噛み合わせの全身への影響は様々です。かみ合わせの異常が耳に症状をもたらすという認識は最近ではだいぶ浸透してきています。
当院を受診なさる初診の患者様も「耳鼻科の先生にかみ合わせを調べてもらうように言われました。」とおっしゃる方が年々増えているように感じます。耳鼻科の先生から患者様をご紹介頂く症例も年々増加しています。
ですがまだまだ「本当に耳症状とかみ合わせが関係するの?」という意見もあります。
確かに、耳の症状というものはとても複雑で難しいです。基本的には耳症状の専門分野は「耳鼻咽喉科」です。耳はとても繊細で複雑な器官ですので、耳症状が起きた際は必ず、耳鼻科を受診するということが大切です。耳鼻科の先生は耳のプロフェッショナルですから、耳鼻科領域に根本の原因がある場合はそこで解決するでしょう。
耳鼻科の先生が耳を精査してうえで「耳には全く問題がないです」となると、患者さんは「じゃあどうすれば・・・」となってしまいます。その際、「もしかしたらかみ合わせかも?」と一度疑ってみてください。
顎関節と耳は物理的にとても近くに位置しています。耳の穴に指を入れて口を開いたり閉じたりすると、指先で動きが感じ取れるのがわかると思います。このように耳は顎の関節の動きを一番近くで感じ取っているのです。顎の関節が正常に動いていても、耳には振動が加わるのですから、異常な動きをすると耳にも異常に負担がかかってしまいます。
体の症状は様々な原因が複雑に絡み合って発症してしまうということが多いです。お困りの耳症状の原因の一つとして、かみ合わせの異常が関与しているのであれば、しっかりと歯科領域での治療が必要です。
聴力はかみ合わせのセンサー
聴力とかみ合わせは密接にかかわっていると説明しましたが、あくまでも歯科での治療は口腔内領域の改善です。難聴や耳鳴り、めまいの治療をしているわけではありません。かみ合わせが良いか悪いのかを診断する方法の一つとして、聴力をセンサーとし、治療に活用していくということです。ですので「聴力を良くするためにかみ合わせ治療をする」というのではなく「聴力をセンサー」としながら、正しいかみ合わせ治療に活用していくということです。
症例
老人性難聴の改善
耳鼻科にて、「老人性難聴」と診断された患者さんです。耳鼻科では年齢的なもので仕方がないという説明があったそうですが、突発的に起きたため別の耳鼻科に相談したところ、かみ合わせを調べた方がいいのではと説明を受けたそうです。ご自身でも長年歯の不調を放置していて、思い当たる点があったそうで、長坂歯科を受診なさいました。
口腔内を拝見したところ長期間右の大臼歯(奥歯)が抜けたままになっていて、左でしか噛めない 状態だったようです。右の欠損部に入れ歯を作成しバランスよく噛めるようになったところ、聴力が回復しました。
突発性難聴の改善
突発性難聴を発症し、耳鼻科では様子を見ていくしかないといわれたそうです。当院を新聞で知ったそうで、かみ合わせ治療のため受診なさいました。左側小臼歯部に長年虫歯があり、痛みがあるので右の奥歯だけで食べていたそうです。左小臼歯部の虫歯治療後、前歯を含め全体でバランスよく噛むように咀嚼訓練を行ったところ、聴力が改善されました。
かみ合わせと耳症状の文献
・長坂斉,佐藤亨、高江洲義矩、石川達也:咀嚼習癖に起因する聴力障害、第9回日本全身咬合学会1999
・長坂斉、佐藤亨、高江洲義矩、石川達也:咀嚼習癖に関連する聴力の動態、全身咬合学会誌、2000、6(2)、147-152
・長坂 斉:咬合が関連すると思われる難聴の診断および咬合改善処置-気導および骨伝導聴力について-、日本歯科保存学会誌、第116回学会プログラム抄録集、、163、2002
今回のキーワード
・噛み合わせが悪いと出る症状
・噛み合わせの全身への影響
・噛み合わせと耳鳴り
・噛み合わせと難聴