歯を抜かないために、噛み合わせ治療をしましょう
- 2024年10月25日
- 噛み合わせ,歯周病,噛み合わせが悪いと出る症状
「歯を抜かない治療」
極力歯は抜きたくないものです。現在の歯科医療では、歯の保存が第一優先です。抜歯は最終手段です。経年的に患者さんの口腔内を診ていると、一本でも歯があるかどうかで、その後の治療の選択肢の幅は大きく変わってきます。「ここの歯が残っていればなぁ」と思いながら治療計画を立てることも多々あります。昔の歯科治療は、痛みがある歯はすぐにでも抜いてしまおうという治療方針もあったそうなのでそういう時代だったと考えると仕方がない部分ではあります。
その点で、長坂歯科は、開業当時から常に「歯の保存」を心がけて治療方針を立ててきました。長坂歯科は、私で4代目・開業111年目の歯科医院です。私の曾祖父の代から歯科治療を行っています。現在私が見ている患者さんの中には、私の祖父の治療を受けていた方もいらっしゃいます。祖父からも父からも言われていた教えは共通して「極力歯は抜かないこと・極力神経は抜かないこと」でした。当時としてはなかなか珍しい治療方針でしたので、全国から多くの「極力歯を抜きたくない」という患者さんがご来院されていました。
祖父・父にかかっていた患者さんから、「当時抜歯といわれた歯を長坂先生に抜かずに治療してもらいました」と言っていただけることが多く、とてもうれしい気持ちになります。これからも「極力歯を抜かない」という治療方針を引き継ぎ、治療に励みます。
歯を抜かない治療は長坂歯科の理念
長坂歯科で「歯を抜かない・神経を抜かない」治療にこだわり続ける理由の一つが、顎口腔領域全体をひとつの器官として診ているからです。歯を診る際に、単に一本の歯として診るのではなく、顎・口腔の中の一つとして認識して治療を行います。ただ部品が壊れたから取り換えればいいというものではありません。歯一本一本それぞれが活躍することで、顎・口腔は成り立っています。すべてのバランスの調和が何よりも重要です。一本だけ歯を治療する際も、必ず全体のバランスを考えたうえで歯科治療をする、そのためにはそれぞれの歯の重要性を理解し極力保存をする。これが長坂歯科に代々受け継がれてきた理念です。
歯を抜かないために重要な「噛み合わせ」
歯を抜かないために、長坂歯科で重要視することが「噛み合わせ」です。
そもそも歯を抜くことになる大きな原因は二つあります。①歯周病②歯根破折です。
歯周病と歯根破折は噛み合わせが悪いことで発生します。ですから、歯を保存するうえで一番重要なことは「噛み合わせ」を考えて治療をするということです。
歯には、食事中や会話中、睡眠中などに噛む力(咬合力)がかかります。咬合力はすごく強く、最大で自分の体重の1.5倍近くかかることもあります。そんな力を分散するために、歯は通常28本生えています。すべての歯でバランスよく噛む事が出来れば、一本の歯にかかる負担は1/28で済みますが、噛み合わせに問題があり偏った噛み方をしていると、場所によっては過重な咬合力がかかってしまいます。過重な咬合力がかかる歯は、根っこを支えている歯槽骨が吸収してしまい、歯周病になります。また、神経のない歯は根っこに栄養が送られず弱い歯ですので、過重な咬合力がかかり続けると根っこが割れる「歯根破折」という状態になります。願われてしまった場合は抜歯するしかありません。
歯を抜かないためには「歯周病」と「歯根破折」を防ぐ必要があり、そのためには噛み合わせを十分考慮した歯科治療が必須となります。
実際に歯を抜かずに済んだ症例
噛み合わせを考えながら歯科治療をすると、おのずと歯周病も改善します。
上記のレントゲンの患者さんは、「かかりつけ医で11本歯を抜くように言われた。インプラントにするといわれたが、抜きたくない」というご相談で長坂歯科を受診なさいました。当院で拝見したところ、確かに重度に歯周病であり、先生によっては抜歯を選択してもおかしくはない状況でした。ですが、ここで歯周病になってしまった原因である「噛み合わせ」を考慮せずに、即抜歯をしインプラントを入れても、時間とともにインプラントも悪くなる可能性が出てきます。すぐに抜歯をするのではなく、噛み合わせを検査・診断し、噛み合わせを良くすることから始めていきました。
噛み合わせ治療を行うことで、前医では抜歯といわれていた歯の歯槽骨が回復し、歯周病が改善しました。数年たった現在でも歯周病は落ち着いており、11本抜くように言われていた歯は1本も抜いていません。
噛み合わせ治療は、歯周病の改善につながります。
噛み合わせと歯周病に関する論文
長坂俊幸,矢野秀佳,長坂斉:聴力を指標とした咬合バランスの改善による歯槽骨の回復と全身症状の軽減した症例報告その1,日本全身咬合学会雑誌23(1),11-16,2017