ご妊娠中の歯科治療
- 2024年8月25日
- コラム
ご妊娠中の患者さんから「妊娠中に歯医者さんに行っても大丈夫でしょうか?」とご質問いただくことがよくあります。
ご妊娠中は、歯医者さんで定期的に歯科健診をすることが実はとても大切です。
今日は、妊婦さんの口腔内の変化と、歯科健診の大切さについてお話していきます。
妊婦中は歯周病・虫歯のリスクが高い!!
ご妊娠中は、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。悪阻がひどく、何回かに分けてご飯を食べると、間食が増え、虫歯のリスクが上がります。また歯ブラシを口の中に入れるだけで吐き気がしてしまう方などは、口腔内の清掃状態が悪化してしまいます。悪阻でもどしてしまったり、すっぱいものを好んで食べたりする方も多いため、口腔内が通常よりも酸性になりやすく、そこから歯を溶かしてしまうということもあります。そこから虫歯になるリスクがどんどん高くなっていきます。
また、ご妊娠中は、歯周病にも気を付けないといけません。歯周病菌は「エストロゲン」という女性ホルモンをエサに繁殖していきます。ご妊娠中はホルモンバランスの関係から、歯周病菌が繁殖しやすい口腔内環境になっています。
ですから、いつもよりも念入りに口腔内をチェック・メンテナンスする必要があります。
ご妊娠中の歯周病は胎児にも悪影響!
歯周病があると、低体重児や早産のリスクが高くなるという研究結果が日本臨床歯周病学会から発表されています。口の中に慢性的な炎症があると、炎症性サイトカインが産生され、血液内で増えていきます。血液内に炎症性サイトカインが増えると体は出産のサインだと受け取ってしまい、早産につながることがあります。
妊婦さんの歯科治療の注意点
妊婦さんはしっかりと歯科健診を受け、メンテナンスをする必要がありますが、歯医者さんで注意しなくてはいけない点もあります。
虫歯などの治療
虫歯がある際は治療をしていく必要がありますが、ご妊娠の時期によって注意が必要になります。妊娠初期は、胎児の器官発育にもっとも重要な時期です。積極的な治療は極力避け、対処的な治療にとどめておいた方がいいといわれています。妊娠中期は、比較的安定しているため、歯科治療を行うのはこの時期がよいとされています。
妊婦さんの態勢
歯科治療中は、長時間仰向けでチェアに座っている必要があります。妊娠後期になり、お腹が大きくなってくると、子宮が下大静脈を圧迫し、低血圧が起きてしまう恐れがあるため、注意が必要です。
おくすりの注意点
痛み止めや、抗生剤などの飲み薬を処方する必要がある際も、注意が必要です。お薬の種類によっては、慎重投与であったり、妊婦さんには投与が禁止されているお薬もありますので、歯医者さんとよく相談の上飲み薬を決めてください。
レントゲンの注意点
歯科治療では、レントゲンを撮影することがあります。歯科で使用するレントゲンは、被ばく量もとても少なく、また範囲も口腔内に現局しているため、ご妊娠中でも問題ないとされていますが、やはりお母さんによっては気になる方もいらっしゃると思いますので、歯医者さんに相談するようにしましょう。
ご出産後も定期的な歯科受診は大切
ご出産後も口腔内環境を整えることが非常に大切です。ご妊娠中と同様出産後はホルモンのバランスや、睡眠不足などで歯周病が進行しやすいです。また、お忙しくて歯磨きや歯間清掃具の使用をついつい怠ってしまうこともあるかと思います。
ご妊娠中、出産後は定期的な歯科健診を!!
ご妊娠中は色々と大変なことも多く、なかなか歯医者さんから足が遠のいてしまうとも思いますが、是非定期的に歯科健診をするようにしてください。またご出産後も、小さなお子さんがいると、歯医者さんに通いにくくなってしまうと思いますが、歯医者さんは医療のプロですので、小さなお子さんを一緒に連れてきても全く問題ありません。赤ちゃんを抱っこしながら治療を受ける患者さんもたくさんいらっしゃいますし、治療中スタッフが赤ちゃんをお預かりすることもできますので、ご遠慮なさらずご受診くださいね。